【工場の人手不足問題】原因や現状を打開する6つの対策
近年、国内企業の人手不足はますます深刻化しています。中でも、工場(製造業)の人手不足は、労働人口の減少や労働環境悪化などを理由に問題が顕著に表れており、募集をしても必要な人材を確保できないケースが多い状況です。
これは企業にとって経営にも関わる重大な問題であるため、早急に対策を立てなければなりませんが、そのためには実態を把握し、できるだけ早く先手を打つことが重要です。
そこで本記事では、人手不足の実態や原因、工場の運営に及ぼす影響、また人材不足を解消するための対策もご紹介していきます。
近年、国内企業の人手不足はますます深刻化しています。中でも、工場(製造業)の人手不足は、労働人口の減少や労働環境悪化などを理由に問題が顕著に表れており、募集をしても必要な人材を確保できないケースが多い状況です。
これは企業にとって経営にも関わる重大な問題であるため、早急に対策を立てなければなりませんが、そのためには実態を把握し、できるだけ早く先手を打つことが重要です。
そこで本記事では、人手不足の実態や原因、工場の運営に及ぼす影響、また人材不足を解消するための対策もご紹介していきます。
統計データから分かる工場の人手不足の実態
厚生労働省の「2023年版ものづくり白書」で公表されたデータによると、製造業の就業者数は約20年間で157万人も減少しています。そのうち若年就業者数は129万人、女性就業者数は91万人減少していることが分かっています。
直近で見ると2021年は1,045万人、2022年は1,044万人と横ばいではあるものの、3年連続で減少している現状です。
一方、高齢就業者数は20年間で32万人も増加しています。つまり製造業では、働き盛りの若年就業者数が減る一方で、高齢就業者数が増えているという「高齢化」も深刻化しているのです。
工場が人手不足に陥る原因
工場・製造業が人手不足に陥る背景には、様々な原因があると考えられています。主な原因として挙げられるのは以下の5つです。
・労働人口の減少
・指導する人材の不足
・働き方の多様化
・工場に対する負のイメージ(きつい・汚い・危険)
・新型コロナウイルスの影響
1つずつ見ていきます。
労働人口の減少
工場が人手不足に陥る理由の一つに、少子高齢化による労働人口の減少が挙げられます。日本では少子化が進み、出生率は大きく低迷したままです。新たに労働人口として加わる人数が減っているため、全体的に労働人口が減少しています。
今後も少子高齢化はさらに深刻化すると予想されていることから、労働力人口も減少し続けることでしょう。
また、労働人口の減少は特に地方で懸念されています。ただでさえ少なくなっている20代前後の労働者が、賃金の高さや働きやすさを求めて都会に移住すると、地方ではこれまで以上に人材確保が困難になってしまうのです。
指導する人材の不足
指導する人材不足も原因のひとつです。もう少し具体的に説明すると、ベテランが退職したことによる現場の技能人材の不足があります。
近い将来、ベテラン従業員の多くが退職すると、現場を指導する人材も少なくなるため、ベテランが持つ技術が若手に継承されない恐れがあります。その場合、製造業で以前より課題となっている技能人材の確保がどんどん難しくなっているのです。
働き方の多様化
終身雇用制度が浸透していた一昔前までは、一つの企業に勤め続け、定年を迎えるのが一般的でした。しかし、近年のライフスタイルや仕事に対する価値観の多様化により、終身雇用制度は崩壊の一途をたどっています。
また、新型コロナウイルス感染拡大を機に、テレワークなどの柔軟な働き方が注目され、多くの企業で導入されています。一方、工場では現場で決まった時間に働く必要があったり、設備がなく家では仕事ができなかったりと、業務の性質上導入することができませんでした。
多様な働き方を重視する働き手が多い現代で、それらに対応できない工場では新たな人材の確保が難しいのです。
工場に対する負のイメージ(きつい・汚い・危険)
工場勤務に対して、「3K」と呼ばれる「きつい」「汚い」「危険」といった負のイメージを抱く方は多い傾向にあります。あくまでイメージなのですが、そのイメージが根強く、敬遠されがちです。
この負のイメージにより他の業種に人材が流れていることも、人材不足を招いている大きな理由となります。
実際、製造業の現場では24時間稼働している工場などもあり、早朝や夜勤のシフト勤務などでキツいと感じる方もいるでしょう。また、油や化学薬品の臭いがきつい、作業服が汚れやすいといったこともあるでしょう。さらに、重量の大きい製品を扱う作業や機械を扱う際には危険が伴うのも否定できません。
働き方改革や工場の自動化などにより、これらの負のイメージを払拭できている企業ももちろんありますが、実際には負のイメージが先行し、求職者が働く先を選ぶうえでの大きな障害になっているのもまた事実です。
新型コロナウイルスの影響
新型コロナウイルスの感染拡大も人材不足に拍車をかけています。実際、入国制限や帰国強制などの影響で、日本で働く外国人労働者が大幅に減少しました。
また、感染症対策として出勤の制限があり、現場の人が減ったことから業務に支障をきたす企業・工場も少なくはありませんでした。
特に工場などで働く製造業はテレワークが難しい業種であり、出勤制限による影響は他の業種よりも大きく、事業規模の縮小→収益の低下→経営不振→解雇→人手不足と、負の連鎖が起きたことも大きな理由と言えるでしょう。
人手不足で懸念される工場運営への影響
ここからは、人手不足により特に影響が大きいと考えられる以下について1つずつ解説していきます。
・生産力の低下
・競争力の低下
・労働環境の悪化
・離職者の増加
・事業の縮小・倒産のリスク
生産力の低下
人手不足が恒常化すると工場の生産力が低下します。特に中小企業の工場では、たった1人足りないだけでも「生産ラインを動かせない」「シフトに入れる人がいない」「経験不足の従業員に任せなければならない」といった問題が発生してしまうような状況です。
利益向上を考えれば受注量が増加することは嬉しいものの、受注量が増えた結果、人手不足が原因で生産ラインを維持できない可能性が出てきます。
もちろん、生産ラインを動かせなければ納期遅延につながり、急ぐばかりに品質低下や事故のリスクも増大してしまうでしょう。
競争力の低下
人手不足は、企業における競争力の低下も招きます。新たな人材を確保できないと、既存の人員だけですべての業務をこなさなければなりません。
そのため、本来は若手がやるべき業務を、スキルを持つベテランが行わなければならなくなり、より高度な作業や付加価値の高い業務に充てられるリソースがなくなってしまいます。
その結果、企業として新たな価値や独自の強みを生み出しにくくなり、競争力低下を招いてしまうのです。
ベテランだけで業務を続け、今は何とか維持できている場合でも、いずれは定年退職で現場を去るため将来に不安を残すことになりかねません。
労働環境の悪化
業務量に対する人手が足りないことで、従業員一人当たりの業務負担は当然増加します。その結果、労働環境の悪化を招くでしょう。
休めない状況が続けばワークライフバランスも崩れ、モチベーションは低下する一方。加えて、業務過多により従業員の肉体的・精神的負担が増大すると、パフォーマンス能力も低下し、作業中のミスや抜け漏れなどが発生する恐れもあります。
これらは労働災害や製品の品質低下にもつながりかねない大きな問題です。
離職者の増加
前述した通り、人手不足は既に働いている従業員にシワ寄せがいき、労働環境の悪化を招きます。労働環境の悪化は、結果的に従業員の求職者・離職者を生み出すことになる可能性が高いです。
また、そのことがさらなる人手不足を呼び込むという悪循環を招いてしまいます。
今働いている従業員だけでなく、求職者も快適で働きやすい労働環境を重視する傾向にあることから、優秀な人材を確保し定着させるためには、労働環境の整備が必要不可欠です。
事業の縮小・倒産のリスク
今いる人員のみでできる業務量には限界があります。しかし、自社の人材だけでは賄えないからと外注費が膨らんでしまった場合、利益が出ず、結果的に事業規模の縮小を迫られることも有り得ます。
特に中小企業では、少ない人員でなんとか現場を回しているといった工場が少なくないのが実情です。そのため、たとえ受注が好調で事業が順調であっても、人手不足から生産ラインを維持できず、黒字倒産してしまうケースも中にはあります。
工場の人手不足を解消・予防する6つの対策
工場・製造業の現場における人手不足は、企業の未来をつかさどる深刻な問題であるため、一刻も早く手を打ちたいところです。
最後に、人手不足を解消・予防していくための6つの対策をご紹介します。
・負のイメージの払拭・イメージアップ
・採用の見直し・採用枠の拡大
・人材育成の拡充
・業務効率化の推進
・労働環境(工場の環境/待遇)の改善
・IT技術の活用
それぞれもう少し詳しく見ていきましょう。
負のイメージの払拭・イメージアップ
工場に対する負のイメージを払拭することは人手不足解消への第一歩です。「きつい」「汚い」「危険」を感じやすい部分に関して工場内で課題を見つけ、具体的に改善してみましょう。
そのうえで、Webサイトを立ち上げて写真や動画を公開したり、SNSアカウントを運用したりすることが効果的です。
整理整頓をはじめとした5Sを徹底し、労働環境を整備し、負のイメージからの脱却を図れば、興味を持つ人が増えてくることが期待できます。自社がどのような企業なのか、どんな工場でどんな人が働いているのかなど、積極的にアピールしてみましょう!
ただし、この手法は人手不足に対して即効性があるものではありません。人材確保を優位に行うための戦略として継続し、長期的な運用でイメージアップを図りましょう。
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採用の見直し・採用枠の拡大
人手不足解消には、採用の見直しも必要です。求職者が重視しているポイントと自社の現状を照らし合わせ、課題を改善することから始めます。
例えば、求職者が「残業が少ない」ことを重視しているにも関わらず、「毎日残業」「長時間労働」が常態化しているようであれば、労働時間の見直し・管理を徹底しましょう。
また、人手不足を解消するためには、採用の間口を広げることも視野に入れましょう。次に紹介するような新たな人材を確保するのも手段の一つです。
女性の雇用促進
女性就業者の割合は全産業に比べて低いものの、生産工程の自動化などを進めたり、短時間勤務や出産・育児へのサポート体制を整備したりすることで、雇用のチャンスが生まれます。
また、女性の雇用を積極的に行うことは、「女性が活躍できる」「環境や制度がしっかりしている」という企業イメージの向上にもつながるでしょう。
シニア世代の雇用促進
近年は就労意欲の高いシニア世代が増えています。このシニア人材の雇用も人手不足解消のキーポイント!
というのも、シニア人材の今まで培った技術と経験を企業に還元してもらうことができ、企業側と雇用される側の双方にメリットがあるからです。
実務経験が豊富なシニア世代を再雇用すれば、前述したような指導する人材の不足の問題も解消できるでしょう。
外国人の採用
技能実習制度を利用して外国人人材を雇用する方法もあります。技能実習制度は、技能や技術を通じて、発展途上国の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的としたものです。
技能実習生は受け入れ先の企業と雇用契約を結び、最長で5年間就業することができます。対象職種が定められているものの、製造業では約50職種が対象となっており、実際に雇用している企業も少なくありません。
人材育成の拡充
社内の研修制度を充実させたり、業務のマニュアル化を推進したりすることで、人材育成の効率化を図ることも対策のひとつとして挙げられます。
かつての製造業ではベテランの仕事を「見て学ぶ」ことが当たり前でしたが、なかなか思うように人材が育たないケースも多く見られました。
その点、ベテラン従業員の技術や知識を言語化して、全社的に共有することができれば、指導する従業員のリソースを削減しつつ、人材を効率良く育成することができるでしょう。
業務効率化の推進
業務の無駄をなくして既存従業員の負担を軽減できれば、休職や離職による人材流出を防ぐことが可能です。
DX推進や自動化によって業務効率化を図ることで、これまでよりも少ない人数で業務を担えるようになります。
その分、付加価値を高める取り組みや、独自の強みを活かした新たな商品の開発など、より重要な業務に時間を割くことができ、競合他社に負けない企業力を高められるでしょう。
労働環境(待遇/工場の環境)の改善
近年、待遇や福利厚生が充実した企業への就職を希望する求職者が増えているため、以下のような内容を見直してみましょう。
・給与
・休暇制度
・育児休暇
・資格取得のサポート制度
・各種手当 など
待遇改善や福利厚生の見直しによって働きやすい環境を整備できるため、現従業員の定着率の向上も期待できます。
また、工場勤務の「3K」の負のイメージの払拭のためにも「5S活動(※)」が非常に重要です。
それと同時に、空調や照明、ニオイ対策など、工場内部の物理的な側面にも配慮し、従業員が快適に働ける環境を整備することも非常に重要です。
関連記事:工場の整理整頓の重要性|5Sの目的やメリットと取り組み方のコツ
施工事例:工場内部の効率的な空調・換気計画による製造エリアの暑さ対策
その他の施工事例:工場建設・工場建築のファクトリアの施工実績一覧
IT技術の活用
工場の人手不足を解消する方法として最後にご紹介するのは、IT技術の活用です。IT技術を活用し、新たな在庫管理システムの導入を進めたり、これまで人が行っていた作業を自動化したりすることで、人手不足に対応することができます。
ITと言ってもその技術はさまざまですが、例えば「AI(人工知能)」、「IoT(モノのインターネット)」、「カメラ」、「ロボット」など、工場で活用できる技術は多岐に渡ります。
こうしたIT技術の活用によって業務効率化・生産性向上、人手不足や企業の競争力強化を実現できるでしょう。
労働環境改善へ!人材不足を解消する工場づくりはファクトリアにお任せ!
本記事でお伝えしてきた通り、特に工場・製造業では年々人手不足が深刻化しています。
人手不足を解消・予防するために効果的な対策はさまざまありますが、何より働きやすい労働環境を整備するなど、今働いている人材の流出を防ぐ対策をとることが先決です。
そのためには、従業員が快適に安心して働ける作業環境の整備、作業効率を上げる設計、モチベーションが上がる見た目など、工場のハード面にも目を向けることが重要です。
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