効果的な工場の騒音対策とは?対策方法は発生源と騒音の種類に合わせて選ぶ!
工場を稼働していて受けるクレームの1つに騒音があります。工場からの騒音に関するクレームは、50年前と比較すると約60%と半分近くまで減っていますが、それでも年間1万5000件前後を推移しており少ないとは言えない状況です。
平成27年の場合、騒音に関する苦情件数の約30%が工場・事業所、建設現場が約33%となっています。工場の騒音対策は、近隣住民との良好な関係づくりのためにも大切です。この記事では、工場の騒音対策の具体的・効果的な方法についてまとめます。ぜひ、クレームの対応だけでなく予防のためにもご一読ください。
工場の騒音についての法律・規制
工場の騒音に対する規制は、国による法律と自治体による条例とがあります。また立地によって規制の対象や内容が異なるため、自社のケースについては自治体に確認するのが確実です。
国による法律は、次の2つがあります。
「騒音規制法」
環境庁所轄の法律で、工場・事業所、建設作業など4種の騒音を規制。主な用途(住居用・工業用など)で分けられた区域別に、時間帯ごとの騒音の大きさの上限などが定められている
「環境基準」
環境基本法に基づく基準。発生源不問の騒音全般、新幹線・航空機の騒音について規定。地域の用途別に時間帯により騒音の大きさの上限を定める。地域は自治体が指定
上記は国による法律と基準なので全国一律に適用されますが、さらに工場のある自治体によっては条例が定められている場合があります。さらに、労働者の労働環境を守るという視点から、厚生労働省による「騒音障害防止のためのガイドライン」も存在します。
工場の騒音対策を行う手順
工場で騒音対策を行う場合は、次の手順で行います。
1、現状の把握
2、対策方法の決定
3、対策の実施
4、効果測定と改善
見ていただければわかるように、PDCAで改善していく形で行います。それぞれの段階について、具体的に見ていきましょう。
騒音対策の手順➀現状の把握
騒音対策の第一歩は、現状の把握です。機械や設備の振動や音域、騒音の大きさを分析しましょう。工場で発生する騒音の原因や状況を確認し、問題を特定することが重要です。例えば、耳には聞こえにくい「低周波」は特定しにくい場合もあります。発生源や騒音の種類・タイプによって適切な対策を選ばなくてはなりません。作業場内・敷地外など場所別に確認しましょう。
また、専門の防音会社に相談して対応策を提案してもらうことも効果的です。
騒音対策の手順②対策方法の決定
現状が把握できたら、適切な対策方法を検討・決定します。具体的には後述しますが、遮音・吸音・防振などの選択肢があります。具体的な設備としては、壁や天井への防音シートの貼り付け、防振マットの敷き詰め、建物の外への防音壁の設置などがあります。そのほか発生源となる設備を騒音の少ないものに交換することなども考えられます。
人が感じやすいのは中音域(500~4,000ヘルツ)の音だと言われています。この中音域をいかに効果的に聞こえないようにするかが騒音対策のカギと言えるでしょう。
騒音対策の手順③対策の実施
対策方法を決めたら、その対策を実施します。防音パネルや壁、吸音材料の設置、機械や設備の振動対策を行う場合は工場の稼働に影響が出る場合もあります。業者に外注するケースがほとんどですが、設置作業の時間の短さも業者選びのポイントとなるでしょう。
そのほか稼働や作業の時間を夜間から日中に変更するような場合は、シフトや勤務体制の変更・社内での周知徹底なども必要です。
騒音対策の手順④効果測定と改善
施工後、測定器を使用して現場における音レベルを確認します。施工前と比較して効果が確認できた場合、近隣や職場環境の改善に繋がります。
効果が十分でない場合は、原因を特定してより適切な対策方法を検討する必要があります。また、労働者や近隣住民のためにも、音響対策は定期的に見直すことが望ましいと言えます。設備や機械の入れ替え、場所や状況の変化に対応するため、適時相談や検討を行いましょう。
工場で対策すべき騒音の発生源とその音
工場で騒音の発生源となるもの・対策すべき騒音には次のものがあります。
● 機械・設備の音
● 作業で発生する音
● 車のエンジン音など
● 工場内の建設・工事の音
● 作業中や休憩中の話し声
音の種類によって対策の方法が変わるため、それぞれについて知っておくことが大切です。1つずつ見ていきましょう。
対策すべき騒音の発生源|機械・設備の音
まず、製造などの機械や設備の稼働音があります。これはイメージしやすいのではないでしょうか。参考に、前述した「騒音規制法」で著しい騒音を発生する施設として規制の対象となっている「特定施設」には次の11種類があります。
● 金属加工機械
● 空気圧縮機及び送風機
● 土石用又は鉱物用の破砕機、摩砕機、ふるい及び分級機
● 織機
● 建設用資材製造機械
● 穀物用製粉機
● 木材加工機械
● 抄紙機
● 印刷機械
● 合成樹脂用射出成形機
● 鋳型造型機
ただしこれらに限らず、機械の規模や年式などによって発生する音の大きさや種類は異なります。あくまで発生する音を基準に対策を考えましょう。
対策すべき騒音の発生源|作業で発生する音
稼働音に近いとも言えますが、人による作業や工具の使用などによって発生する音も騒音になりえます。たとえば何かをたたく音、グラインダーで研磨・切削する音やインパクトドライバのモーター音などです。
音が発生する設備や工具は屋内で使用されているのが一般的ですが、たとえば自動車工場などのように半屋外と言えるような場所は屋外と大差ありません。そのような場所で工具を使用すると、作業音が気になる場合もあります。
対策すべき騒音の発生源|車のエンジン音など
製造や作業で発生する音のほかにも、車のエンジン音などが騒音となる可能性もあります。具体的には、搬入・搬出のトラックのエンジン音、フォークリフトのブザーやアラーム音などです。
いずれも荷物の積み下ろしに関わりますが、積み下ろしは屋外で行われることも多いため周囲に音が広がっている場合もあります。また音の大きさがそれほどでなかったとしても、長時間続いたりする場合は騒音と感じる可能性が高まります。待機中のトラックがエンジンをかけっぱなしにしているようなケースです。
対策すべき騒音の発生源|工場内の建設・工事の音
工場による騒音ではありませんが、工場の敷地内で建物を建築したり工事をしたりしている音も騒音になりえます。確かに厳密には工場の騒音とは言えないとはいえ、工場で発生している音であり周囲の人からすれば機械の稼働音も建設機器の音も大差ありません。
冒頭で述べた通り、騒音の苦情のうち建設現場の騒音が占める割合は高くなっています。そもそも建設や工事で発生する音は大きいため、注意が必要です。
対策すべき騒音の発生源|作業中や休憩中の話し声
場合によっては、作業中や休憩中の話し声がうるさいと捉えられることもあります。外で作業を行う場合のお互いに確認する声や打ち合わせする声、屋外の喫煙スペースなどで歓談する声などが該当します。
音量としてはたいしたことはないかもしれませんが、住宅地にある工場の場合などは注意が必要です。無機的な騒音よりも話し声の方が気になるという人は一定数存在します。
騒音の種類
騒音はいろいろな種類の分け方がありますが、ここでは音の伝わり方での分類による次の2種類についてまとめます。
● 空気音
● 個体音
騒音の対策をする場合、この音の伝わり方によって効果的な方法を選び分ける必要があります。そのためそれぞれの特徴などを知っておくことは有益だと言えるでしょう。
以下、1つずつ見ていきましょう。
騒音の種類|空気音
「空気音」は、空気を介して伝わる音のことです。「空気伝搬音」と呼ばれることもあります。イメージで言えば、耳で聞こえるような一般的に音と言われて連想する音です。上で対策すべき例として挙げた音はどれも空気音だと言えるでしょう。
空気音は比較的対策しやすいと言えます。発生源と近いほど音の大きさは大きくなるのが特徴です。
騒音の種類|固体音
「固体音」は床などが振動して伝わる音です。「固体伝搬音」と呼ばれることもあります。「振動音」と呼ばれていることもあります。工場で発生しやすい固体音の例は、ポンプやエアコン・製造機器の音などです。近年苦情が増えている「低周波」も固体音です。
振動音は、耳で聞くというより身体で感じる低音に近いイメージです。機械や設備の音も、空気だけでなく地面からも伝わってきます。このような場合は空気音・振動音が混ざっているケースです。固体音は対策しにくいというやっかいな特徴があります。
工場の騒音対策の方法
工場の騒音対策には、効果的な方法がいくつかあります。具体的には次のような方法があります。
・ 遮音する
・ 吸音する
・ 防振する
・ 発生源を断つ
・ 稼働・作業の時間帯を変更する
1つの手法だけでなく、いくつかの手法を組み合わせると効果が高まります。上記の対策方法を実行するための具体的な設備などをふくめて、1つずつ解説していきます。
対策方法|遮音する
「遮音」は、音を跳ね返して外に漏れるのを防ぐことをいいます。空気音に役立つ対策ですが、空気音だけでなく固体音に効果のある素材もあります。遮音は次に述べる吸音と組み合わせるとより効果が高まります。
具体的な遮音の方法としては、壁・天井・床などに遮音シートや防音マットを施工することが挙げられます。ただしこれらの方法は外に音が漏れることはありませんが、室内で反響するのがデメリットです。それに対して発生源を防音材で囲んで遮音する方法は、工場内も静かになるとともに施工も小規模で済むというメリットがあります。そのほか防音ドアなども遮音の方法の1つです。
また、シンプルなことですがまずは作業中は作業場の窓やドアを閉めるのは基本です。それだけである程度音漏れを防ぐことができます。
対策方法|吸音する
「吸音」とは、音を吸収することです。騒音対策において効果的な方法の1つが吸音です。
吸音用の素材にはウレタン、グラスウールなどが多く使われます。実際に設置する吸音材の例としてはロールタイプやボードタイプが一般的です。そのほかパーテーションやパネルタイプもあります。壁に貼るほか、ロールタイプはダクトに巻くといった使い方もできます。
吸音材は遮音材と組み合わせると、遮音材による反響を抑えることができるほか防音の効果も向上します。
対策方法|防振する
「防振」とは振動を吸収することです。固体音の対策には必須だと言えるでしょう。機械の下や床に防振シートなどを敷き詰めるのが一般的な方法です。防振材の素材には、ゴムやシリコン、ウレタンなどが主に使われます。遮音と防振の機能を併せ持つ製品もあります。
設置に際しては設置する場所の環境も加味して素材を選ぶ必要があります。たとえば高温になる場所にはシリコンが適していますが、ウレタンや天然ゴムはやや不向きです。温度のほか水や油を使う場所かどうかによって使い分けることも必要です。
対策方法|発生源を断つ
発生源を断って音そのものを出さないようにするという方法もあります。具体的なやり方としては、設備を使わない、音の出ない方法で作業するといった例が挙げられます。
車のエンジン音であれば、できるだけマメにエンジンを切ることで音が発生するのを止めることが可能です。話し声なら、声を出さなくても済むようにする、声の大きさに注意するなどの方法があります。
対策方法|稼働・作業の時間帯を変更する
騒音対策においては、稼働・作業の時間帯を変更する方法も有効です。工場では、機械の使用や重機の運転による騒音が発生しますが、作業時間を見直すことで近隣への影響を軽減することができます。
具体的には、騒音が発生する設備の稼働や作業を早朝・深夜ではなく日中に集中的に行うなどの方法が考えられます。工場の設備や作業手順などが許せば、時間帯によって作業場所を変えて音漏れしにくい場所で行う方法もあります。
万が一クレームが来たときの対応
万が一周囲からクレームが来た場合、まずはお客様の苦情を丁寧に聞き、問題の原因を特定しましょう。具体的には次の3点に注意して対応します。
・ 調査に協力する
・ 発生源を特定して対処する
・ 誠意をもって対応する
順に見ていきましょう。
対応|調査に協力する
工場にクレームが入る場合、直接ではなく自治体の公害苦情相談窓口などを経由することも多くあります。自治体経由でクレームがあった場合は、法律の範囲内かどうか調査を受けることになります。その際は調査に協力しましょう。
調査は数日に及ぶこともあり、その間通常通りの工場稼働は難しくなる可能性もあります。しかし相手の生活環境を守るためにも、調査を優先しましょう。それが長い目で見たときに自社のためにもなります。
対応|発生源を特定して対処する
調査に対応するだけでなく、自社としても防音などの対策に取り組みましょう。まずは騒音の大きさや種類、聞こえる時間帯などをヒアリングしたり測定したりします。
それらの結果をもとに、工場稼働のスケジュールや時間帯・使用している設備などと比較して発生源を特定します。発生源を特定したら騒音の種類や大きさに応じて適切な対処を行います。具体的な手順は、この記事の初めにまとめた通りです。
対応|誠意をもって対応する
工場における騒音対策は、近隣住民との円滑な関係を築くために必要不可欠です。そのため、もしも騒音が法律の範囲内であったとしてもクレームには誠意をもって対応しましょう。
不誠実な対応をしてしまった場合の直接的なマイナス要素として、自社のイメージダウンはもとより、場合によっては住民の反対運動・訴訟などのリスクもあります。クライアントや業界全体に悪影響が及ぶ場合もあります。さらには取引停止や損害賠償のリスクもないとは言えません。
防音効果の高い工場建設ならファクトリアへ
すでに稼働中の工場の場合は、現在の環境の中でできる範囲の対処を行うことが必要です。それに対して新しい工場を建設予定の場合は、制限のない状態で防音対策を行うことができます。工場の建設を検討中であれば、私どもファクトリアにご相談ください。
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