工場で「太陽光発電」を導入するメリット・デメリット!費用や補助金も解説
工場の運営コストとしてただでさえ電気代が大きなウエイトを占める中、電気料金の値上げなどにより更なる負担がのしかかり、多くの企業が深刻な影響を受けています。
そこで近年、経済的かつ環境にも優しい選択肢として工場への導入が進んでいるのが、「太陽光発電」です。
本記事では、工場に太陽光発電を導入するメリット・デメリット、さらには費用や補助金、導入前に知っておくべき注意点を徹底解説します。
工場の「太陽光発電」とは?自家消費が増えている理由
太陽光発電は、太陽の光を利用して電気を作る発電方法です。太陽光発電システムには、大きく分けて「全量売電型」と「自家消費型」の2種類があります。
・全量売電型…発電した電力をすべて電力会社に売却するシステム(=自家消費できない)
・自家消費型…発電した電力を自社のオフィスや工場などで自家消費し、余剰電力を電力会社に売却するシステム
このうち、工場においては「自家消費型太陽光発電」の導入が加速しています。特に工場は広大な屋根面積を有していることが多く、太陽光パネルを設置するのに理想的なスペースとなります。
もちろん、工場の屋根だけでなく、駐車場や使われていない敷地内にも設置可能。工場ならではのスペースを有効活用し、多数の太陽光パネルを設置することにより、大量の電力を発電することができるようになるのです。
電力を大量消費する工場だからこそ、工場で使う電力自社で生み出すことができれば、電力代の削減を実現でき、その分大きな利益につながります。このような理由で、工場への太陽光発電の導入が増えているのです。
工場に太陽光発電を導入する10のメリット
工場に太陽光発電を導入するメリットは主に以下の通りです。
電気代にかかるコストを削減できる
電気料金高騰リスクを回避できる
・余った電気は売電できる
・災害時や停電時の電力源になる(BCP対策にも有効)
・工場の遮熱・断熱効果が期待できる
・税制優遇によって節税できる
・脱炭素を促進できる
・工場立地法の対策ができる
・補助金を活用しながら設備投資ができる
・企業のイメージアップにつながる
1つずつみていきましょう。
電気代にかかるコストを削減できる
工場で太陽光発電を導入する一番のメリットは、電気代を削減できることです。太陽光発電により、工場の稼働に必要な電力を自社で発電し、その電力を自家消費することで、電力会社からの電気購入量を削減することができます。
工場の電気代は規模によっても大きく異なりますが、数百万円から数億円にのぼることも。一般的に年間の電気代を10%〜50%まで削減できるケースが多いとされているため、電気代の負担は大幅に軽減できるでしょう。
施工事例:CO₂を利用した冷媒システムの活用と太陽光パネルの設置で、約10%の電気代削減と約35%の環境負担削減を実現!
電気料金高騰リスクを回避できる
太陽光発電を工場に導入することで、電気料金高騰リスクを回避できる点もメリットのひとつです。
電気料金は、世界経済の停滞や世界情勢による天然ガスや石炭などの輸入制限、円安による燃料の輸入価格上昇などで、今後も「上がる」ことが予想されています。
しかし、電気料金が上がる要素となる、火力発電に必要な「燃料費」、「再エネ賦課金」「電力需要」などに関して言えば、自社の太陽光発電で得られた電気は一切その影響を受けることはありません。
つまり、電力を自社消費することで、電気料金の値上げに左右されることなく工場を運営し続けられるというわけです。
余った電気は売電できる
「自家消費型太陽光発電」であれば当然、自家消費するのが前提ですが、自社で使い切れずに余った電気は電気会社に売却することも可能です。
太陽光発電10kW以上50kW未満の場合、「発電した電気のうち30%以上は自ら使用する」という条件がありますが、裏を返せば「残りの70%程度の電気を売電」でき、収益性を高められるというわけです。
ただし、余剰売電をする場合は「補助金」を活用できません。余剰売電による売電収入より、完全自家消費を想定して補助金を活用する方が圧倒的に利点があるため、余剰売電は補助金に通らなかった場合のひとつの手として考えておきましょう。
災害時や停電時の電力源になる(BCP対策にも有効)
太陽光発電は工場の「BCP対策」としても有効です。BCP対策とは、自然災害や事故など何らかの事態が起こった際に、損失を最小限に抑え、事業を継続または早期復旧するための対策のことを意味します。
例えば、長期間の停電は工場の生産に深刻な影響を及ぼし、大きな損失につながる可能性があるでしょう。そんな時、自立運転機能を持っている太陽光発電システムを導入していれば、停電が発生した際でも電力源が確保でき、リスクを最小限に抑えることができます。
また、災害時に自家消費型太陽光発電や蓄電池の設備を開放するなど、地域貢献の側面も持ち合わせています。自社の事業継続だけではなく、地域貢献、それによる企業の信用や信頼の獲得にもつながるでしょう。
工場の遮熱・断熱効果が期待できる
工場の屋根に太陽光パネルを設置すると、屋根が受ける日射を太陽光パネルが吸収し、屋根の遮熱性や断熱性が向上するというメリットも生まれます。
夏は屋根からの熱を抑えて室内を涼しく保ち、反対に、冬は熱を逃がさず室内を暖かく保つことができます。また、その結果、空調設備の負荷軽減や電気代削減ができる点も嬉しいポイントです。
施工事例:太陽光発電ソーラーパネルを設置することで省エネ化を実現
その他の事例:工場建設・工場建築のファクトリアの施工実績一覧
税制優遇によって節税できる
太陽光発電の導入によって以下の税制優遇が受けられ、節税効果を得られる点もメリットのひとつです。
中小企業経営強化税制
太陽光発電など特定の設備を導入した際に「税額控除(設備費用の税額を最大10%控除)」または、「即時償却(初年度に節税できる)」の支援が受けられる制度。
発電した電気をすべて自家消費する「全量自家消費」、また、一部を売電する「余剰売電型」の場合には「自家消費率50%以上」が対象になります。
自家消費率50%未満の場合は、「中小企業投資促進税制」という税制優遇制度もあります。
脱炭素を促進できる
2020年10月の「2050年カーボンニュートラル宣言」以降、日本においても脱炭素化が加速しています。そこで、企業が脱炭素に取り組むための手法として最も多く採用されているのが「太陽光発電」です。
太陽光発電は、発電時にCO₂が発生しないという特徴があります。電気代を削減しながらCO₂の排出も削減できる、そして脱炭素を推進できるという点は大きなメリットとなるでしょう。
工場立地法の対策ができる
一定の敷地面積や建築面積を超える「特定工場」は、工場立地法にて
・敷地の20%以上を緑地にする
・敷地の25%以上を環境施設にする
という義務が定められています。
この工場立地法で認められている環境施設には、「太陽光発電」が含まれています。
そのため、工場の屋根や駐車場などに太陽光発電システムを設置することで、工場の空いたスペースを有効活用しながら敷地面積に対する環境施設の割合を拡大できるというわけです。このようにして工場立地法の対策を講じることができます。
補助金を活用しながら設備投資ができる
太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーを導入する法人向けに、国や自治体が補助金制度を用意している場合があります。
補助金を活用できれば、導入時にかかる太陽光発電システムの費用負担を抑えながら設備投資が可能です。
企業のイメージアップにつながる
太陽光発電の導入によって、企業のイメージアップが見込める点もメリットとして挙げられます。企業の環境への取り組みも重視されるこの時代、環境問題に関心のない企業はマイナスイメージを持たれる可能性があります。
反対に、工場に太陽光発電を設置するなど環境問題に対する対策を講じれば、自社の環境意識の高さを示すことができ、企業のイメージアップにつなげることができるでしょう。
工場に太陽光発電を導入するデメリット
次に、太陽光発電を工場に設置するデメリットについてご紹介します。
以下のようなデメリットがあることを把握したうえで計画を進めていけば、導入後もスムーズかつ効果的な運用が見込めるでしょう。
初期費用が高額になりがち
工場に太陽光発電を設置する場合、小規模な工場でも数百万円、大規模な工場となれば数千万円以上の初期費用が必要となるケースも珍しくありません。設置面積が広くなるほど、設備や工事にかかる費用も増加する傾向にあります。
しかし、設置面積が広ければその分「発電能力」も高くなるため、初期費用の回収期間は短くなります。また、電気代の削減や売電収益などによってコストは下がっていき、太陽光発電の稼働が続く限り利益を生み出し続けるため、初期費用を上回るメリットを期待できるのも事実です。
とはいえ、初期費用が高額であることは事実ですから、設置には経営者・工場運営者による判断が求められます。
定期的なメンテナンスが必要になる
太陽光発電を問題なく稼動できる状態で保つためには、定期的なメンテナンスが必要です。メンテナンスを怠ると、
・発電効率の低下
・太陽光発電設備の故障
・出火や落下などの事故
などの危険が生じる可能性があります。
ただ、定期的にメンテナンスを行えば、万が一トラブルが発生していても早期に発見でき、悪影響も最小限に抑えられるでしょう。
専門業者による定期点検や修理・部品交換といったランニングコストがかかる点はデメリットになり得ますが、安定した発電量を確保するためには欠かせない費用です。
発電量が安定ではない(雨天時や夜間は発電できない)
太陽光による発電量は、天候や時間帯によって変化します。例えば、雨天時や夜間には発電できないほか、一般的に日射量の少ない冬は夏に比べて発電量が少ない傾向にあります。
そのため、朝夕や夜間に多くの電気を使う工場では、思ったような電気代削減効果が得られないかもしれません。
発電量を有効利用するためには、蓄電池を併設して日中に使い切れなかった電気を貯めておいて朝夕や夜間に放電する、工場の稼動開始時間を日中に変更するなど、工場側での工夫も求められるでしょう。
高圧受電設備(キュービクル)の改造工事が必要になる場合がある
太陽光発電を工場に導入すると、既存の高圧受電設備(キュービクル)の容量が不足することがあります。その場合、「追加」もしくは、「既存のキュービクルを改造」する必要があります。
追加する場合、200万円以上の費用がかかる一方で、改造工事に対応できる業者であれば追加のキュービクルを設置せずに問題を解決でき、大きくコストを削減できます。
なお、キュービクルの改造は「第一種電気工事士」の資格が必要なため、業者の選定時には有資格者がいるのか確認しておくと安心です。
自然災害などで故障するリスクがある
屋外に設置することの多い太陽光発電は、自然災害などにより直接的な影響を受けやすいことも頭に入れておきましょう。強風・落石・雹・降雪によるパネルの破損などのリスクはつきものです。
そのため、工場に太陽光発電を導入するときには、自然災害への対策(保険の加入等)は必須と言えます。
工場における太陽光発電の設置費用の目安
太陽光発電の設置費用は、設置する太陽光パネルの面積や場所によって変わります。
なお、2023年に設置された 10kW 以上の平均値は「23.9 万円/kW」であり、年々費用は低下傾向にあるようです。
例えば、中小規模の工場であれば100kW、大規模な工場であれば200kWの太陽光システムが必要になると仮定すると、初期費用の目安は、中小規模の工場で約2,400万円、大規模な工場では約4,800万円となります。
工場で太陽光発電を導入する際に活用できる補助金
企業が工場や倉庫などに太陽光発電を導入する場合、国や自治体の補助金制度を受けられる場合があります。ただし、期間に限りがあることや利用条件が定められていることも多いため、ホームページ等で対象かどうか確認しましょう。
現在、予定されているのは以下の補助金制度です。
工場に太陽光発電を導入する際の注意点・確認事項
最後に、工場に太陽光発電を導入する際の注意点と、確認しておきたいポイントを解説します。
まずは電力消費量を確認
太陽光発電を導入するうえで、正確な設計・シミュレーションを算出するためにも、「電力使用状況(いつ・どのくらいの量の電気を消費しているか)」を把握しましょう。
そのうえで、自社にどのくらいの規模の太陽光発電システムが必要なのかを具体的に検討できます。
また併せて、初期費用を回収できるのかを見積もっておくことも重要です。初期費用回収には約7~10年かかると言われていますが、メンテナンス不足による発電効率の低下や部品の修理・交換費用など、想定外の出費が増える可能性があるため、そうしたことも加味しながら具体的なシミュレーションをおこないましょう。
太陽光発電設備の設置場所の確認
太陽光発電の発電量はパネルの枚数に比例しますが、設置面の方向や角度、周辺の障害物の有無によっても発電効率は大きく変化します。
そのため、太陽光発電システムは専門家に相談の上、最適な場所に設置しましょう。
工場の太陽光発電の設置に最適な条件
工場の“屋根”に太陽光パネルを設置する場合は、以下の2つを必ず押さえておきましょう。
・降雪や塩害の心配がない気候
降雪や塩害の多い地域は太陽光発電に不向きです。降雪により太陽光パネルが覆い尽くされると、太陽光がパネルまで届かず発電できなくなります。
また、塩害が多い地域では設備の電気機器等に悪影響を及ぼし、故障の原因になりかねません。そのため、該当地域では特殊な気候への対策を施した太陽光発電設備などの設置を検討すべきです。
・屋根が南向き・角度が30度前後
発電効率が最も良いのは、屋根が「南向き」・「角度が30度前後」の場合です。
屋根に斜度がない場合でも、パネルを載せる架台で調整可能なため、フラットな平面屋根でも十分な発電量が見込めます。なお、傾斜の角度は地域によって異なります。
補助金や助成金制度も見逃さない
太陽光発電設備を導入する場合、少しでも費用面の負担を軽減するために、国や自治体などが実施している補助金・助成金制度の対象かどうか確認しましょう。
国のホームページ等で確認するほか、設置業者に相談するのもおすすめです。
施工方法や時期、トラブル発生のリスクを把握しておく
工場の屋根に設置する際、太陽光パネルを支える架台を固定するために、屋根に穴を開けるケースがあります。その際、工法や屋根の状態によって処理が異なるため、設置業者側に屋根に関する知識が必要です。
また、工場に太陽光発電を導入する際には、一時的に工場の電源を停止させなければなりません。一時的とはいえ工場の稼働を止めるのは大きな損失につながるため、繁忙期を避けてもらうなど、「施工時期」についても確認・相談しましょう。
さらに、感電や火災、落下などの事故のリスクがあることも覚えておいてください。設備の破損などのトラブルを放置することで、感電や漏電により火災を引き起こしたり、経年劣化したパネルが落下して事故が起きたりする可能性もゼロではありません。これらを防ぐためにも定期的なメンテナンスが必要です。
信頼できる業者に相談する
工場における太陽光発電の導入は一般家庭とは違って、大がかりな工事になるため、より高度な技術や工場建築に関するノウハウが必要です。
間違った方法で設置してしまうと取り返しがつかなくなるため、実績が豊富な施工業者を複数選び、その中から最も信頼できる業者に相談しましょう。
工場に太陽光発電を導入するならファクトリアへご相談!
使用する電気消費量が多くとも、広い面積に多くの太陽光パネルを設置できる工場では、太陽光発電の自家消費によって多くのメリットが得られます。
長期的に運用することでさらにメリットは増大し、企業の大きな利益につながるでしょう。ぜひこの機会に自家消費型太陽光発電の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
なお、「工場建設時に太陽光発電の導入を検討したい」、「環境に優しい工場に立て替えたい」、「太陽光を含むあらゆる工場のコスト削減策を知りたい!」など、工場に関するご要望やお悩みがございましたら、私ども【ファクトリア】へご相談ください。
工場建築のトータルサービスブランドとして、さまざまなニーズにお応えしますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
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