工場の暑さ対策の具体例とは?設備・グッズ・その他に分けて解説
工場の暑さ対策は、快適な労働条件づくりの一環として欠かすことができません。とくに熱中症予防という点では、もっとも重要で基本となる従業員の健康にかかわるポイントとなります。
この記事では工場の暑さ対策について、基本となる方針と工場の設備・個人で使えるグッズなど具体的な施策についてまとめます。企業のご担当者様はぜひご参考にしてみてください。
工場の暑さ対策はなぜ必要か
工場の暑さ対策は、さまざまな理由から行うべきだと言えます。
まず暑さ対策が熱中症の予防になり、作業員の健康を守れることが第1の理由です。さらに労働環境を改善することにつながるので、作業員も気持ちよく働けるようになります。その結果として、離職予防や求人募集にも役立つ可能性があります。
また快適な温度では作業もしやすく集中力も高まるため、生産性向上につながるでしょう。さらに意識が散漫になったり熱中症になったりすることもなくなり、事故発生や労災のリスク減の効果も期待できます。
このように、工場の暑さ対策は従業員にとっても会社側にとっても大きなメリットのあることだと言えます。
暑さ対策の基本的な方針
基本的な暑さ対策の方針についてまとめます。対策は大きく3つの方針に集約できます。
・熱を遮る
・換気する
・空調の効果を高める
一般に、快適に作業できる温度とされているのは25度前後です。コストや設備との兼ね合いを見ながら、上記の方針にのっとって具体的な対策を行います。そうして快適な温度に近づけるべく試行錯誤していきましょう。では、方針について1つずつ見ていきます。
方針|熱を遮る
まず1つめの方針は、熱を遮ることです。遮熱することで温度の上昇を防ぎ、屋内の温度を涼しく保ちます。熱の例としては、天井・壁・窓からの太陽の熱や、ボイラや工業炉など熱源となる設備が挙げられます。
遮熱においては、太陽による屋根の輻射熱対策が重要になります。屋根はまとまった面積があるせいで屋内に与える影響も大きくなるからです。また工場の屋根は、金属製の屋根材を使った折板屋根が採用されることが多くあります。とくに折板屋根は断熱性が低く、日光の影響を受けやすいため対策が必要です。
方針|換気する
次に、工場内の空気を換気するということが挙げられます。工場は空気の入れ替えがしにくい構造になっているケースが多くあります。具体的には次のような点です。
・天井が高い
・面積が広い
・換気扇や窓・ドアなどが少ない
こうした構造により、熱い空気が屋内にこもる傾向があります。そのため意識的に、熱くなっている空気を排出する、涼しい空気を取り入れることが必要です。
方針|空調の効果を高める
また、空調の効果を高める工夫も必要です。屋内が広く天井が高いことによって、空調も効きにくくなるからです。
具体的な対応としては、高性能の空調を使用したり温度管理を徹底したりする方法が挙げられます。ただしこれらの方法は、場合により設備の変更が大がかりとなり導入のコストが高くなってしまうこともあるのがデメリットです。
そのほかの対応としては、屋内全体を冷やすのではなく従業員が作業しているところを区切ってそこだけ空調を効かせる、空気の流れを作って冷たい空気を行き渡らせるなどの方法が考えられます。
工場の暑さ対策具体例
上記の方針を具体的にどのような方法で行うかの例をまとめます。この記事では以下の方法について解説します。
・シーリングファン
・屋根・壁の遮熱
・スポットクーラー
・屋根用スプリンクラー
・ミスト
・置換換気システム
・熱源の遮熱・局所排気
・ビニールカーテン
1つずつ見ていきましょう。
具体例|シーリングファン
まず1つ目は、天井にシーリングファンを設置する方法です。シーリングファンにより、空気の対流が生まれます。その結果、空調で冷やされた空気が一部に溜まることがなくなり、空調の効果が高まります。省エネが期待できるケースもあるでしょう。
冬場はファンを逆向きに回転させると、高いところの温まった空気を低いところに流すことが可能です。つまり冬場の寒さ対策としても活用できます。その他、結露対策としても有効です。
具体例|屋根・壁の遮熱
2つ目は、屋根や壁を遮熱する方法です。屋根や壁に遮熱材を設置したり遮熱塗料で塗装したりします。先述した通り、屋根の輻射熱は工場内が暑くなる大きな原因です。屋根を遮熱することにより、工場内の温度上昇を抑えることができます。
屋根や壁のほか、窓に遮熱シート・遮熱フィルムを貼るなどの対策も有効です。さらに太陽光発電のパネルは、発電による省エネのほか遮熱効果も期待できます。屋根に直射日光が当たるのを遮るからです。
具体例|スポットクーラー
さらに、スポットクーラーを導入するという方法もあります。作業者のいるところをピンポイントで冷房します。作業者が定位置で作業する場合におすすめの方法です。
複数の吹き出し口があるタイプは複数人に風を送ることができます。キャスター付きのタイプも多く、そういったタイプなら臨機応変に移動させることが可能です。
屋内全体を冷やすよりも手っ取り早い効果が得られるほか、工事も小規模で済む点もメリットだと言えます。
具体例|屋根用スプリンクラー
屋根用スプリンクラーも暑さ対策の方法の1つです。屋根に水をまくことで、屋根自体の温度を下げる方法です。原理は打ち水と同じで、まいた水が蒸発するときに周囲の熱を奪うので温度が下がります。屋根の温度を下げることで屋内の温度を下げることもできます。
スプリンクラーは構造がシンプルなので、工事の時間がかからないのがメリットです。ただしランニングコストとして水道代がかかるほか、金属製の屋根の場合サビやすくなる可能性もあります。それら2点は注意が必要です。
具体例|ミスト
屋内用にミストを導入するという方法もあります。原理はスプリンクラーと同じで、気化熱で周囲を冷やす方法です。水を微細なミストにして、ファンやコンプレッサーで送風します。
スポットクーラーのように局所的に冷却することが可能です。水を使いますが、床など濡れないタイプも多くあります。大掛かりな工事が不要で導入しやすいのもメリットです。
ただし湿度が高くなる点がデメリットです。そのため、木や紙の製品を扱う場合や精密機械がある場合など、使用できないケースもあります。導入前にあらかじめよく自社の場合問題がないか検証しましょう。
具体例|置換換気システム
置換換気システムも暑さ対策に役立ちます。置換換気システムを使用すると人が活動する高さを効率よく換気でき、温度を下げることが可能です。
温まった空気は高いところに上ります。そこで置換換気システムでは、高いところで屋内から排気し、低いところで室温より低い温度の空気を低速で屋内へ吸気します。置換換気システムはもともと溶接工場向けに開発された技術です。その経緯からもわかるように、屋内に熱源がある場合に効果が期待できます。
具体例|熱源の遮熱・局所排気
ボイラや工業炉など熱源への対策としては、遮熱や局所排気といった方法があります。
熱源となる設備に遮熱材を施工したり遮熱塗料で塗装したりして遮熱します。あるいは排気フードをつけて、局所的に排気することも可能です。設備によってどのような方法が可能か検証してみましょう。
いずれも熱源にアプローチすることで、熱が屋内に広がって温度が上昇するのを防ぐことができます。
具体例|ビニールカーテン
ビニールカーテンも暑さ対策に有効です。出入口や搬入口に設置したり作業者のいるところを区切ったりして使います。そうして外気を遮断したり空調を入れる範囲を狭めたりすることで、空調が効きやすくなります。
フォークリフトや人が出入りする場所に向いているのれんタイプや、ほこりの心配が少ない静電気の発生しにくいタイプなど、用途に合わせた製品が多くあります。
シンプルなので低コストで実施が可能で、かつわかりやすい効果も得られる方法です。
個人でできる暑さ対策グッズ
暑さ対策には、工場の設備面のほか個人でできる暑さ対策グッズを活用する方法もあります。ここでは、以下のグッズについて解説します。
・空調服
・インナー
・冷感グッズなど
・保冷剤ベスト
1つずつ見ていきましょう。
グッズ|空調服
空調服は、ファンが腰についた服のことです。服の内側の空気を循環させて体を冷やします。正しく着れば高い効果が得られます。
ただし作業内容によっては、作業中に着用するには不向きです。たとえば溶接作業の場合、ファンが火花を吸い込んでしまう可能性があります。そのほか粉じんが多い場所などにも適しません。そういった作業の場合は、作業中はファンを止める、粉じん予防にフィルターをつけるなどの対策が必要です。
グッズ|インナー
作業着の下に着るインナーも、冷感インナーなど快適に過ごせるタイプが市販されており、いろいろな種類の製品が存在しています。たとえば、以下のような技術が生かされた製品です。
・接触冷感…触れるとひんやり感じる生地
・通気性・給水速乾性…蒸れにくく着心地がよい
そのほかにも各メーカー独自の技術を活用した冷感インナーがあります。風を受けると冷感アップするものもあり、空調服と組み合わせると効果が高まります。
グッズ|冷感グッズなど
身に付けることで涼しく感じる冷感グッズもあります。具体的には次のようなものです。
・冷却タオル…ひんやり感じるタオル。水にぬらす瞬間冷却タイプと濡らさずに使う接触冷却タイプがある
・冷却マフラー/クールマフラー…濡らして絞って振ると冷感効果があるマフラー
・ネッククーラー…首に装着するだけで冷感効果がある。電動タイプ・PCM素材タイプ・保冷剤タイプなどがある
こういったグッズを使用するだけでも体感温度を下げることができます。
グッズ|保冷剤ベスト
保冷剤ベストは、保冷剤を入れるポケットが両脇や背中などに付いているベストです。空調服と組み合わせて、インナーとして着用すると相乗効果が得られます。
製品によって、フィット感やセットできる保冷材の数、保冷材の持続時間などに違いがあります。専用の保冷剤が単品でも販売されている製品もあり、交換用を用意しておけばより長時間快適に作業することが可能です。
そのほかの対応
そのほか、工場内の暑さについては以下のような対応をすることも求められます。
・暑さ対策グッズの推奨
・熱中症について周知
・水分補給の環境整備
・休憩室の準備・環境整備
これらの対応は、おもに熱中症の予防として役立つものです。1つずつ解説します。
そのほかの対応|暑さ対策グッズの推奨
まず、上記のような個人で対応できる暑さ対策グッズを勧めることが挙げられます。グッズの使用は設備導入よりコストがかからず、それでいて作業者の体感温度を下げることができます。
推奨する場合は、当然ですがグッズの持ち込みや着用を許可することも必要です。そのほか、グッズを購入した場合の補助なども考えられます。推奨や補助といった形で協力を仰ぐほか、会社で一括購入して支給する方法もあります。
そのほかの対応|熱中症について周知
また熱中症について周知しておくことも大切です。症状や初期症状を共有しておくと、不調を感じたときに自分で熱中症かどうか判断できます。また熱中症になりやすい体調や予防の方法を周知しておくと防止に役立ちます。さらに対処方法を伝えておけば、症状がひどくなるのを避けることもできるでしょう。
具体的な症状や初期症状などは以下の通りです。
・熱中症の症状…嘔吐、けいれん、頭痛など
・初期症状…立ちくらみ、めまい、こむら返りなど
・なりやすい体調…寝不足、疲れなど
・予防方法…水分補給、衣服の工夫(上記のような冷感の服)など
・対処方法…水分補給、塩分補給、安静
このほか、熱中症になった場合の報告のルールなども伝えておきましょう。
そのほかの対応|水分補給の環境整備
水分補給の環境も整えましょう。とくに必要な時にすぐ補給できるよう、作業場の近くに麦茶やスポーツドリンクなどの水分や塩飴・塩タブレットなど塩分を用意するのがベストです。あるいは自動販売機を設置する方法もあります。
定期的に声掛けをしたり水分補給の時間を決めたりして熱中症の予防に努めます。そのほか水筒や塩飴・塩タブレットの持ち込みを許可したり、緊急時用にすぐ体内吸収できるスポーツドリンクや経口補水液を用意したりしましょう。
そのほかの対応|休憩室の準備・環境整備
休憩室の準備や休憩室内の環境整備も行いましょう。やはり休憩室も作業場の近くに準備するのが望ましいと言えます。緊急時に休憩室に移動させなくてはならないケースもあるからです。
休憩室には、水分・塩分のほか、冷えたおしぼりや体温計などを用意します。熱中症になったときに横になれるスペースがあるとよいでしょう。室内の温度管理も重要で、適度な温度設定にして冷えすぎに注意します。
暑さ対策の工場建築ならファクトリアへ
既存の工場でも暑さ対策は可能です。しかし費用対効果や導入できる設備に制限や限界がある場合も少なくありません。そのため、設備導入の費用対効果や建物の築年数などにもよりますが、リセットして新しい工場にするのも選択肢の1つだと言えます。
もしも工場建設を検討中なら、私ども「ファクトリア」にご相談ください。ファクトリアは設計から施工までワンストップで対応し、実際に稼働したときのノウハウを設計に反映させることができます。暑さ対策も制限なしに行うことが可能です。
ご興味おありなら、お気軽にお問い合わせください。ページ最上部と最下部に電話番号とお問い合わせフォームのボタンがあります。そちらよりご連絡ください。
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