工場の結露対策総まとめ!【天井裏・天井・床・ダンボール・機械】
結露は季節を問わず起こります。車を運転する方なら、夏場も冬場もフロントガラスが曇ることがあるので納得いただけるのではないでしょうか。工場で結露が起こると、製品の品質や労働環境の安全性などにもかかわります。対策することが必要です。
この記事では、工場で結露ができやすい理由や場所、場所ごとの対策方法について包括的にまとめます。結露対策の概略が理解できるので、企業のご担当者様はぜひ参考にしてみてください。
結露とは?発生のメカニズム
結露とは、空気が冷やされることによってもともと空気中に含まれていた水蒸気が水滴になることです。外気で冷やされた窓ガラスや氷の入ったグラスの表面に水滴が付くのと同じ現象です。
コーヒーに例えて考えてみましょう。熱々のコーヒーに砂糖をたくさん溶かしてから氷を入れて急に冷やすと、溶けていた砂糖が元に戻って底に溜まることがあります。コーヒーは熱いほど砂糖が溶けやすく、温度が下がると少しの砂糖しか溶けなくなります。
空気と水蒸気も同じです。空気も暖かいほど多くの水蒸気を含むことができますが、空気の温度が下がると含むことのできる水蒸気の量が少なくなります。中学の理科で習う「飽和水蒸気量」です。
水蒸気を多く含んだ空気が冷やされると、空気中に入りきれなくなった水蒸気が水滴になって結露ができます。工場や家庭で結露ができるのは、空気が湿っていて窓など冷たい場所があるときに、冷たい場所のそばの空気が冷やされ続けた場合です。
工場で結露ができやすい理由
工場で結露ができやすい理由には、次の事項が挙げられます。
・間仕切りが少ない
・天井が高い
・換気しにくい構造になっている
工場の間取りや構造が原因となって結露ができやすくなります。1つずつ見ていきましょう。
理由|間仕切りが少ない
多くの場合工場は間仕切りが少なく、それが結露の原因の1つとなっています。
空間が広いと、その中にある空気も多くなります。たくさんの空気があると空調が効きにくくなり、対流を作るのが困難です。対流ができず空気がよどむと、窓や天井など外気に近いところの近くの空気が冷やされます。その結果、結露ができてしまうのです。
理由|天井が高い
天井が高いことも結露の原因の1つです。高い天井も広い空間を作ることとなり、空調を効きにくくします。その結果空気の対流ができにくくなり、結露につながります。
とくに暖かい空気は高いところに上っていくため、対流がないと天井付近でとどまりがちです。冬場に加湿器と暖房を使っている場合、水蒸気を含んだ空気が天井で冷やされ結露となりやすくなります。
理由|換気しにくい構造になっている
工場は換気しにくい構造になっていることも多く、それも結露の原因となります。とくに食品工場などは衛生上の理由などから、窓が少なかったりなかったりするほか、扉も少ないことが多くあります。
その場合、換気がなかなかできません。換気ができないということは、多湿の空気を排出することができないということです。さらに換気すると空気の流れが生まれますが、換気できなければ空気の動きも作れません。空気が滞留して冷たい場所の周りの空気が冷やされてしまい、結露になってしまいます。
結露のできやすい場所
結露ができやすい場所とは、外気の影響を受けやすい場所、冷たい場所などだと言うことができます。これは結露発生のメカニズムを考えてみると当然です。水蒸気が冷やされることによって結露が生まれるため、冷えやすい場所が結露のできる場所になるからです。
工場の場合を具体的に考えると、天井・天井裏・床・冷蔵庫や冷房装置近辺・窓・内壁、そのほか機械類などが挙げられます。
結露が引き起こす問題
結露は衛生・商品管理・健康管理などの面で、さまざまな問題を引き起こします。
まず、結露のできるところにはカビが発生しやすくなります。カビが発生するのは、栄養・水分・温度・酸素のあるところです。結露は水分そのものなので、空気中のカビ胞子が結露に付着しカビができやすくなります。
また金属に結露がついていると、サビの原因になります。機械類のほか、金属製の製品がサビてしまうこともあります。さらに結露は木材や断熱材などが腐食する原因の1つです。
ダニ・害虫も発生しやすくなります。ダニは温度・湿度が高い環境を好みます。とくに使用済みのダンボールはダニの生息しやすい場所です。そのほかゴキブリなども高い湿度や古いダンボールを好むので注意が必要です。
さらに製品を保管している場所で結露ができると、製品に水滴がたれてしまうことがあります。そのほか床が滑りやすくなったり室内環境が悪化したりして、作業効率・健康などの面で従業員にも悪影響が及びます。
工場の結露対策の基本
結露対策を行う場合、初めに工場内外のいろいろな場所に温度計・湿度計を設置してデータ収集を行いましょう。外気を含めて場所によって温度や湿度にどのぐらい差があるか計測し、原因を絞り込んだうえで効果的な対策を検討します。
結露対策は、結露が発生する条件「水蒸気が多い」「空気が冷やされる」のどちらかの原因を取り除くのが基本です。具体的には次の方法があります。
・換気する
・空気を循環させる
・除湿する
・冷える場所を作らない
複数の方法を組み合わせるとさらに効果が高まります。それぞれの方法について、1つずつ見ていきましょう。
対策の基本|換気する
結露対策の基本、1つ目は換気です。換気することによって、湿度の高い空気を排出し湿度の低い空気を取り込むことができます。それにより工場内の水蒸気の量を減らせます。温度計・湿度計を設置して外気の湿度の低い時間帯を把握しておき、その時間帯に換気するようにしましょう。
さらに換気することによって対流が生まれ、空気のよどみが解消されます。よどみの解消によって室内の空気の温度のムラもなくなります。温度のムラがなくなれば、空気の一部だけが冷えてしまうこともありません。
しっかり空気を入れ替えるためには、空気を入れる場所と出す場所の2か所を作ってその間を空気が通るようにします。できればスペースの対角線に通り道を作るなど、全体の空気が入れ替わるようにしましょう。
対策の基本|空気を循環させる
換気して空気を入れ替えられない場合や換気に向かない時間帯は、室内の空気を循環させて対流を作りましょう。空気を動かしてよどみをなくします。先述した通り、よどみ・滞留がなくなると室内の空気の温度や湿度のムラもなくなります。その結果、一部の空気だけが冷えることがなくなり、結露ができにくくなるのです。
空気の循環に役立つのは、シーリングファン、空調機、扇風機やサーキュレーターなどです。窓や天井の付近など冷えやすい場所はとくに空気を動かすようにしましょう。
シーリングファンを使うと体感温度が5度前後下がるとも言われており、労働環境の改善にもつながります。
対策の基本|除湿する
さらに、除湿して空気中の水蒸気・湿気そのものを減らすことも有効な対策です。湿度が高いときは、小さな温度差でも結露につながります。室内の水蒸気量自体を減らしておくことで結露ができにくくなります。
除湿の方法としては、除湿機や除湿剤を使うのが一般的です。ただしこれまでにも述べている通り工場は空間が広いので、除湿効果を高めるためには工夫が必要です。業務用の除湿剤や除湿機を使ったり、除湿する場所を密閉して場所を絞ったりしましょう。
規模にもよりますが、除湿はコストがかかる傾向があります。除湿剤を定期的に交換したり除湿器を運転させ続けたりする必要があるからです。ほかの手法と組み合わせるのが現実的でしょう。
対策の基本|冷える場所を作らない
冷える場所を作らないのも結露対策の基本的な方法・方針です。冷える場所をなくして温度差が生まれないようにすることで、結露を防ぐことができます。
換気や対流づくりも冷えることへの対策ですが、両者は多少違います。換気や対流づくりは冷えやすい場所の空気が冷却されないようにする工夫なのに対して、こちらは冷えやすい場所自体をなくす方法です。外気の影響を受けやすい場所に耐熱・遮熱などを行います。
より具体的には、天井や壁に耐熱シート・遮熱シートを施工したり、窓に結露防止シートを貼ったりします。
場所別の結露対策
次に、結露のできやすい場所別に対策方法を解説します。ここでは、次の場所についてまとめます。
・天井裏
・天井
・床
・ダンボール
・機械
どの場所も、効果的な方法を選択するためには現状を把握するのが前提です。温度計・湿度計で数値を計測して、原因の絞り込んでから対策方法を検討しましょう。
結露対策|天井裏
天井裏の結露対策として一般的なのは、除湿機や送風機、断熱材の設置です。
天井裏は作業スペースではないため温度や湿度の対策をしていないのが一般的で、下にある作業スペースの環境の影響を大きく受けることとなります。とくに食品工場は、例えば冷蔵庫と調理場とでは大きく温度が異なります。そのぶん結露ができやすいため対策が必須です。
除湿機を使えば天井裏の水蒸気を減らすことができます。ただし湿度を下げることはできますが、熱を発するというデメリットもあります。送風機で空気を循環させる方法もよく採用されますが、場合によってはカビなどを広げてしまう可能性もあります。断熱材は温度の影響を低減できますが、単体で完全な結果を得ることは難しくほかの方法と組み合わせるのがおすすめです。
そのほか原因や規模にもよりますが、天井裏にも空調を入れる方法もあります。空調は一般にほかの方法よりもコストはかかりますが、温度差を解消しつつ湿度を下げることもできます。
結露対策|天井
一般的な天井の結露対策としては、空気の対流作りが挙げられます。天井は高いところにあるため、窓や扉から遠いのがふつうです。そのため換気や除湿などの方法は大きな効果が期待できないからです。
シーリングファンや扇風機などで滞留をなくすことによって、天井付近の空気が冷やされるのを防ぎます。またファンを使って結露のひどい場所にピンポイントで風を当て続けて乾かしてその状態を保ち、結露させないという方法もあります。
もちろん換気や除湿を組み合わせて行うことも有効です。天井以外の場所への効果も期待できます。
そのほか結露を発生させない方法ではありませんが、製品のある場所に簡易的な屋根を付けたりして水滴がかかるのを防ぐのも応急処置的な対処となります。
結露対策|床
床の対策としては、王道ともいえる換気・空気の循環・除湿などの方法が有効です。
シーリングファン・送風機で空気を循環させたり、除湿機を使用して除湿したりしましょう。換気も、扉が使えれば扉を開けて空気を入れ替えましょう。 ある程度高いところにあるため低いところの空気は動かしにくいですが、扉は低いところも換気できるからです。
低いところは湿度が高くなりやすいことに加えて、一般的な床材のコンクリートは断熱性が低いため結露しやすい傾向があります。床の結露は汚れやスリップなどの原因になるため対策が必要です。
結露対策|ダンボール
製品の梱包などに使われるダンボールは、換気のほか床への置き方を工夫したり除湿剤を使うなどの方法で対策します。
商品は床に直置きせず、パレットなどの上に置くようにします。必要に応じてパレットを2枚重ねる方法もあります。地面より高くなるほど湿度は下がるため、水蒸気や結露の影響を抑えることができるからです。
またパレットに乗せる際も、周囲をストレッチフィルムで巻くと湿度の影響が減ります。ストレッチフィルムと一緒に除湿剤を巻くとより効果も高まります。ダンボールに扇風機などで風を当てて乾燥させる方法もあります。
また、工場スペースの角に当たるところは空気が滞留しやすい傾向があります。そのためとくに角は空気を循環させたり、可能なら角の部分にはダンボールや商品を置くのを避けたりしましょう。
結露対策|機械
機械の場合、どのような機械かによって注意すべき点が多少異なります。熱を発する機械もありますが、電動でない金属製の機械はむしろ冷えやすいからです。設備に合わせて、温度差に対する対策を行いましょう。基本的な対策としては、ファンによる空気の循環や換気が挙げられます。
そのほか、電気機器の場合は基盤に防湿コーティングしておくこともトラブル防止に役立ちます。複合コピー機などでも起こることですが、場合によっては結露によって漏電や機械がストップしてしまうこともあるからです。
機械の場合は、専門的な知識が必要となったり自分では対策できなかったりする場合もあります。必要に応じてメーカーや購入先に確認・相談しましょう。
結露対策をした工場建設ならファクトリアへ
工場の結露対策は、まず温度と湿度を計測して現状を把握することから始めましょう。現状を把握して原因を絞り込むことで、より効果的な対策を行うことができます。対策は温度差と湿気をなくすことが基本姿勢です。自社に適した方法を検討してみてください。
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