食品工場の自動化のポイントやロボットの導入メリットをご紹介
工場では生産性の向上や効率化、そして人手不足の問題を解決するために、ロボットの導入など自動化の動きが近年ますます加速しています。
とはいえ、人手不足が顕著な「食品工場」においては、自動化のニーズは高いものの食品工場の特有の懸念があり、自動化がなかなか進んでいないというのも事実です。
本記事では、食品製造業に求められていることや食品工場における自動化の課題、自動化の方法とポイント、自動化ロボットを導入する理由・メリットなどを詳しく見ていきます。新しい時代に向けた工場運営のヒントを見つけてください。
今の食品製造業に求められていること・食品工場の課題
食品製造業は昨今、多様な課題に直面しています。ほかの工場とは異なりHACCP制度への対応も求められるため、常に効率的かつ安全な生産体制を維持する必要があります。
これらの課題を解決するために、工場の自動化や新技術の導入がますます重要となっていますが、まずは食品製造業に求められていること・食品工場の課題について見ていきましょう。
品質確保
食品による健康被害に対する不安から、安全な食品を求める声が高まり、食品製造業では「品質確保」が企業の存続を左右する重要な要素と言っても過言ではありません。
そのため、衛生管理や工程の細部にまで気を配る取り組みを重視しながらも、製造プロセスにおいてムダを削減し、効率を最大化することが求められています。
また、様々な食習慣やアレルギーに対応するため、製品のバリエーションが増加し、それに伴い品質管理の複雑化が進んでいる現状です。
コスト削減
食品製造業が直面するもう一つの重要な課題はコストの削減です。消費者の価格意識の高まりや原材料費の高騰など、様々な要因がコスト削減の必要性を加速させています。
効率的な生産体制を構築し、可能な限りのコストを抑えることが求められますが、そのためにはあらゆる無駄を省き、製造プロセスの最適化を図ることが必要です。
人手不足
少子高齢化が進み、労働人口が減っている昨今、労働力の確保は非常に重要な課題です。2050年までに労働力人口が現在の3分の2に減少するという予測がある中、食品工場は新しい働き方や環境を整備する必要に迫られています。
自動化やスマート化技術の導入により、人手に依存しない生産体制を整えることが急務です。
HACCP対応
HACCP制度は、食品の安全性を確保するための国際的に認められた手法として、ますます重要性を増しています。
このHACCPに基づく衛生管理は、製品の安全性を確保するために避けて通ることのできない課題です。加えて、法律的な要求を満たすための体制整備も必要です。
消費者意識の高まりや、食品に関する法規制の強化を背景に、HACCP対応はもはや選択ではなく義務化となっています。
関連記事:食品工場の衛生管理は生命線!HACCPや5S、身だしなみのポイントを整理
食品工場における自動化の5つの課題
食品工場における自動化は、生産効率の向上とコスト削減のために避けて通れない道です。
しかしながら、実際の導入には多くの課題が立ちはだかっています。ここからは自動化の課題について見ていきましょう。
多品種少量生産への対応
多品種少量を行う食品工場では、製品の種類や数量が頻繁に変わるため、生産ラインの変更作業が頻繁に行われます。従来の自動化システムは、一度設定された工程を繰り返すことに特化しており、柔軟な対応が難しいケースが多いです。
また、小ロット生産では、機械のセットアップ時間や製品切り替えにかかる時間が生産時間全体に占める割合が大きくなり、生産効率が低下しやすいという課題もあります。
加えて、食品は形状やサイズ、材質など、その特性は非常に多様であり、システムの複雑化を招きます。こうした多品種少量生産に対応できる自動化システムは高額な設備投資が必要になることが多く、中小企業にとっては導入のハードルが高いという問題もあるのです。
作業スペース確保の問題
中小規模の食品工場では、作業スペースが限られているため、効果的な自動化が難しいという課題があります。
工場内の限られた空間で安全性を確保しつつ、ロボットを導入することは難しい場合もあるでしょう。
異物混入リスク
自動化ロボットの導入においては異物混入のリスクも重大な課題です。ロボットの部品から剥がれた塗装やメンテナンス時に使用する油分が食品に混入する可能性があります。
これらの自動化によるリスクは、一般的な工場での人間の作業におけるリスクとは異なり、対応策が十分確立されていません。異物混入を防止するための管理体制を整えることも課題となるでしょう。
なかなか導入が進まない
食品工場での自動化は、他の業界に比べて導入が遅れています。それは多くの企業が導入のリスクを懸念しており、特に前例が少ないことが導入を阻む一因です。
成功例や失敗例を元にした評価が難しいため、導入の決断に慎重になる企業が多く見られます。
食品工場ならではの作業がロボットには合わない
食品工場特有の作業、例えば柔らかい食材の扱いや個々に異なる形状の食品の処理は、ロボットには不向きです。
また、水産加工のような特殊な環境では、塩水の影響で機械部品の耐久性が下がるリスクもあります。このような食品工場ならではの特性が、ロボット導入のハードルを高めているのが現状です。
食品工場における自動化の方法とポイント
食品工場において自動化の導入は生産効率の向上や人手不足の解消に極めて有効です。ここからは、自動化の方法とポイントについてご紹介します。
機械化・ロボット化などによる人手作業の自動化
食品工場では、従来人手で行われてきた単純作業や繰り返しの作業を、機械やロボットに置き換えることで、生産効率の向上と人件費の削減が期待できます。
特にピッキング、パッキング、搬送といった作業はロボットが得意とする分野です。また、協働ロボットの導入により人との協働作業も可能になり、柔軟な生産ラインの構築が期待できます。
しかし、設備のみの自動化では前後の作業との流れを考慮しないと、人手不足による新たなボトルネックを生み出すこともあります。そのため、製造管理システムといった全体を見据えた取り組みが必要です。
検査作業の自動化
食品の品質管理において、目視検査は重要な要素ですが、人による検査は疲労や個人差による誤検出のリスクがつきまといます。
そこで検査作業において画像認識技術を活用した自動検査システムを導入することにより、これまで以上に高精度の検査が可能になります。不良品の早期発見や、製品の品質向上に貢献するでしょう。異物検出だけでなく品質管理全般を支援することもポイントです。
生産業務の脱属人化
生産業務では属人化が問題となることが多いです。その点、熟練工の技術や経験に頼っていた生産工程を、標準化された手順やデータに基づいて自動化することで、人材育成の負担を軽減し、製品品質の安定化を図ることができます。
生産計画の最適化や在庫管理の効率化にもつながり、全体的な生産効率の向上につながるでしょう。
IoT導入によるモニタリングやデータ収集・機械設備の監視
IoTセンサーを生産設備に設置し、リアルタイムで生産・稼動データを収集することで、生産状況を可視化し、異常検知や予知保全を実現できます。これにより事前に故障のリスクを低減させることができるでしょう。
また、生産データの分析により、生産計画の最適化や品質確保、生産効率に役立てることができます。うまく活用するには、保全データの一元管理と予防保全の基準見直しが重要なポイントとなるでしょう。
食品工場で自動化ロボットを導入する理由・メリット
食品工場における自動化ロボットの導入は多くのメリットをもたらします。メリットを1つずつ見ていきましょう。
労働力不足の解消
少子高齢化が進む日本では労働人口の減少が避けられず、食品工場においても労働力の確保が大きな課題となっています。自動化ロボットの導入により24時間稼働が可能となり、常に安定した生産体制を維持できます。
これにより、人材不足を解消。ロボットは技能や資格が不要なため、多様な作業員を必要とせず、効率的な労働環境を実現できるのです。
作業効率の向上
自動化ロボットの導入は作業効率・生産効率を大幅に向上させます。ロボットは長時間連続で正確に作業を行うことができ、人間が行うと発生しがちなミス、休憩時間や交代による生産停止の問題を解消します。
これにより、生産ラインの稼働率が上がり、製品の納期短縮や生産量の増加が期待できるのです。ロボットの高精度な動作により、包装やピッキングの作業精度が向上し、製品の品質も安定化するでしょう。
コストの削減
自動化ロボットを導入するには初期投資が必要ですが、長期的に見れば人件費の削減につながります。また、自己診断機能によりメンテナンスが容易になり、突発的な故障を防ぐこともでき生産ロスを最小限に抑えることが可能です。
さらに、ロボットの効率的な資源使用により、材料費や廃棄コストの削減、全体的な生産コストの低下が期待できます。
安全性の向上
食品工場では危険を伴う作業も多く、自動化ロボットがこれらの作業を担うことで、作業員の安全を確保できます。高温・低温の作業や重い物の持ち運びなどをロボットに任せることで、作業員の事故リスクを大幅に軽減できれば安心です。
さらにロボットには安全装置が搭載されており、作業者との衝突を回避します。これにより、労災の発生を防ぎ、安全な作業環境を整えることが可能です。
品質の確保・向上
自動化ロボットは、常に高精度な作業を行うことで製品の均一な品質を確保します。人間が行うと差が出がちな作業においても、ロボット導入によってそのばらつきを抑えられるでしょう。
また、包装やラベル貼りのミスが減少し、高品質な製品を消費者に届けることが可能。また、作業の記録を詳細に保存し、生産履歴や品質検査を管理することで、問題発生時にも迅速に対応できるトレーサビリティの向上が見込まれます。
自然環境への配慮
自動化ロボットは省エネ設計が施され、効率的にエネルギーを使用します。これにより、運用コストを削減しつつ環境への影響を最小限に抑えます。
さらに、資源の効率的な使用により材料の無駄を減らし、廃棄物も削減されるため、持続可能な生産活動にも貢献するでしょう。
食品工場の自動化に最適なロボットとは
自動化が進む現代、食品工場では多品種少量生産や限られた空間での作業が課題となっています。このような環境では、協働ロボットが特に有効です。
協働ロボットは安全柵なしで人と共に作業でき、安全性と作業効率の向上を実現します。また、ダイレクトティーチング技術によって、作業を覚えさせるのが容易です。
力覚センサを搭載したロボットも増え、人間の触覚的な感覚で作業の効果的なフィードバックが可能となっています。ロボットハンドも多様化し、食品に応じた対応が可能です。
食品工場の活躍する自動化ロボット一覧
食品工場では、主に次のような種類のロボットや機械、システムが活用されています。
・食品盛り付けロボット
食品盛り付けロボットは、総菜等をお弁当などのトレイに盛り付けるロボットです。食品を定量とることが可能で、従来人力でないとできなかった作業を代替して行うことが可能で、人力のように個体差もありません。
・ピッキングロボット
ピッキングロボットは、倉庫や工場などで商品を取り出す・運搬する作業を自動化するためのロボットのことです。カメラやセンサーを使って商品を認識し、正確に商品を取り扱うことが可能です。
大量の商品を一度で運搬できるほか、重量物の運搬もできるため、人的コスト削減とともに、怪我やトラブルの発生リスクを軽減できます。
・仕分け用ロボット
仕分け用ロボットは、製品の仕分けを行うロボットです。例えば、ベルトコンベヤーで流れてくる製品を持ち上げ、箱などにきれいに収めることができます。
・製品整列ロボット
製品整列ロボットとは、食品を指定した位置に整列させるロボットです。製品がランダムに配置されている場合、一定のパターンに従って整列させる作業を行うため、効率が上がります。
・箱詰めロボット・箱詰機
指定されたパターンに従って箱詰めを行います。ロボット導入により、箱詰めの人的コスト削減とミス軽減を実現。この過程は特に自動化がしやすい作業です。
・外観検査装置
外観検査装置とは、カメラセンサーやAI技術を用いて、完成した食品や製品の外観を自動的に検査する装置です。
汚れや欠損、食品の不良や異物混入等の検査をスピーディーにチェックできるほか、目視では見逃してしまうような微細な変化も発見することが可能です。
・包装機
包装機は、さまざまな形状の商品をそれぞれに適した形で包装するための機械です。
・ラベル貼付システム
例えば、賞味期限が印字されたラベルを食品パッケージに貼り付ける作業を行うロボットです。生産性向上および省人化が実現し、人的ミスがなくなることで品質も安定するでしょう。
食品工場の自動化を実現し、生産性向上を目指しましょう
食品工場の自動化は、人手不足の解消と生産性向上のための重要なステップです。自動化技術の導入により、労働コストの削減、品質の一貫性向上、さらなる生産効率の向上が期待できます。
また、人手によるミスや安全性のリスクを減少させ、人材をより重要な業務に集中させることが可能です。導入に際しては、現場のニーズを的確に分析し、適切な技術を選定することが成功の鍵となります。
なお、記事中でもお話ししましたが、作業スペース確保の問題などでなかなか導入が進んでいないのも事実です。そのような場合には工場のレイアウト変更なども一緒に検討してみるのがおすすめです。
生産効率を高める工場レイアウトや工場設計に関して検討される際には、ぜひ私ども【ファクトリア】へご相談ください。「工場建設のトータルサービスブランド」として、これまで蓄積したノウハウから御社に最適なご提案をいたします。まずはお気軽にお問い合わせください。
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