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工場運営

うるさい工場の騒音に関する「騒音規制法」や「騒音基準値」を徹底解説

近年大きなトラブルに発展することも多い「騒音」問題。実際に苦情件数は高い水準であり、その中でも工場から発生する騒音の苦情は全体の約3割にのぼるとされています。

つまり、工場を運営する企業にとってこの「騒音」は切っても切れないテーマです。工場の騒音はただただうるさいだけではなく周辺住民の生活環境にも直接影響を及ぼすため、国や地方自治体によって厳しい規制が設けられています。

そのため、企業は「騒音規制法」をはじめとした騒音に関する規制を理解し遵守することが求められ、騒音問題が発生した際には迅速に対応する必要があります。

本記事ではそんな騒音に関する法律や規制基準について詳しく解説していきます。ぜひ最後までご覧ください。

「騒音」に関する規制基準について

騒音問題における規制基準は、国および自治体によって法律や条例で詳細に定められています。

工場で騒音対策を行う際は、まず自社が従うべき具体的な基準を確認することが重要です。以下では、工場の騒音に関連する「環境基準」と「騒音規制法」について説明していきます。

「環境基準」とは

環境基準は、環境基本法に基づき設定された政府が掲げる行政上の目標であり、地域と時間帯によって細かく基準が設けられています。

基準値は40デシベル以下~60デシベル以下の間で設定され、都道府県知事や市長が指定する以下の3つの地域に大別されているのが現状です。

・A:静穏が特に必要とされる地域(療養施設、社会福祉施設等が集合して設置される地域)

・B:住宅用の地域

・C:住宅地+工業や商業への配慮が必要な地域

また、時間は昼間(6時〜22時)と夜間(22時〜6時)に分けられ、それぞれ異なる基準が設けられているため、騒音対策を行う際にはこれらを遵守する必要があります。

地域の類型

基準値

昼間

夜間

50デシベル以下

40デシベル以下

55デシベル以下

45デシベル以下

60デシベル以下

50デシベル以下

 

※地域によっては上記にあてはまらない場合もあります。詳しくは「環境省 騒音に係る環境基準について」にてご確認ください。

騒音規制法とは

騒音規制法は環境省が管轄する法律で、国民の生活環境と健康を守ることを目的として制定されています。この法律では特に工場や工事現場から発生する騒音を対象とし、都道府県知事によって指定された地域内で騒音を発生させる施設が規制の対象となります。

規制基準は、環境基準よりもさらに細かく、地域や時間帯に応じて40デシベル以下~70デシベル以下に分けられています。

このような規制を遵守するためにも、実際に騒音が発生する前に各自治体でしっかり確認しましょう。

騒音規制法の目的

前項でも軽く触れましたが、騒音規制法の目的は、主に生活環境の保全と国民の健康の維持です。

この法律では、工場や事業場、建設工事に伴う騒音の規制、自動車騒音の許容限度の設定などを通じて、地域住民が健康で快適な生活を送れるようにしています。

工場や事業場の騒音が法律で定められた許容範囲を超えた場合、改善のための指導が行われ、公共の平穏が保たれているのです。

騒音規制法における特定施設

騒音規制法では、特定の施設が発生させる騒音を規制対象としています。これには以下の11種類の施設が含まれます。

1、金属加工機械(圧延機械、製管機械等)

2、空気圧縮機及び送風機(原動機の定格出力が7.5kW以上のものに限る)

3、土石用又は鉱物用の破砕機、摩砕機、ふるい及び分級機(原動機の定格出力が7.5kW以上のものに限る)

4、織機(原動機を用いるものに限る)

5、建設用資材製造機械(コンクリートプラント、アスファルトプラント)

6、穀物用製粉機(ロール式のものであって、原動機の定格出力が7.5kW以上のものに限る)

7、木材加工機械(ドラムバーカー、チッパー等)

8、抄紙機

9、印刷機械(原動機を用いるものに限る)

10合成樹脂用射出成形機

11、鋳型造型機(ジョルト式のものに限る)

引用:環境省 騒音規制法

これらの施設がある工場や事業場は地域住民の生活環境に影響を及ぼす可能性があるため,

騒音の発生を抑制するための対策・管理を求められており、その設置や運用には事前の届出が必要です。

騒音規制法の対象範囲

騒音規制法は、特定の施設や作業における騒音について、その発生源や地域の特性に応じた細かな規制を行っています。国が定める基準に基づいて、騒音の許容値は以下の区域ごとに異なります。

・第1種区域…良好な住居の環境を保全するため、特に静穏の保持を必要とする区域

・第2種区域…住居の用に供されているため、静穏の保持を必要とする区域

・第3種区域…住居の用にあわせて商業、工業等の用に供されている区域であって、その区域内の住民の生活環境を保全するため、騒音の発生を防止する必要がある区域

・第4種区域…主として工業等の用に供されている区域であって、その区域内の住民の生活環境を悪化させないため、著しい騒音の発生を防止する必要がある区域

引用:環境省 騒音規制法

例えば、生活環境の保全を重視する第1種区域と、工業用地が中心の第4種区域では許容される騒音レベルが大きく変わるのです。こうした規制により、各地域の住民が安心して生活できる環境作りを推進しています。

具体的な騒音の基準となる値については次の項で見ていきましょう。

【一覧表】時間/区域ごとの騒音基準値(デシベル)

特定工場等における騒音の規制基準値については、先述した区域の区分及び時間の区分ごとに以下の通り定められています。

区域/時間

昼間

朝・夕

夜間

第1種区域

45~50デシベル

40~45デシベル

40~45デシベル

第2種区域

50~60デシベル

45~50デシベル

40~50デシベル

第3種区域

60~65デシベル

55~65デシベル

50~55デシベル

第4種区域

65~70デシベル

60~70デシベル

55~65デシベル

 

なお、時間は以下の通りに区分されています。

・昼間(7時または8時から18~20時まで)

・朝/夕(朝:5時または6時から7時または8時まで、夕:18時~20時から21時~23時まで)

・夜間(21時~23時から翌日の5時~6時まで)

参考:環境省 騒音規制法

騒音レベルをイメージしやすいよう、一般的な音の大きさもあわせてご紹介します。

例)

・救急車のサイレンや走行中の電車…80デシベル

・普通の会話やデパート内…60デシベル程度

規則違反のペナルティ

事業者は指定地域内において、工場や事業場を設置する際や特定建設作業を行う場合、事前に市町村長または特別区長に届出が必要です。

届出を怠った場合や規制基準を超える騒音が発生した場合には、行政からの改善勧告や命令を受けることがあり、従わない場合には罰則が適用されます。工場を安心してトラブルなく運営していくためにも必ず法律を遵守しましょう。

騒音の測定方法

騒音対策の第一歩は、どれだけの音がどこで発生しているかを正確に把握することです。

工場の騒音の測定方法には、専用の機器をレンタルして測定する方法や、騒音対策専門の業者に依頼する方法などがメインとなります。

・専用の機器をレンタルして測定する方法

騒音レベルを正確に測定するためには、騒音のレベルや周波数特性などを測定できる専用の機器が必要です。機器のレンタルで自己測定や初期的な診断ができます。

・騒音対策専門の業者に依頼する方法

工場の騒音の測定については、騒音対策専門の業者に依頼することが最も有効です。自己測定が難しい場合やより確実な数値が必要となる場合は専門業者に依頼しましょう。

地域の騒音規制基準も知っておくべき

前述した通り、工場などが設置された地域では「騒音規制法」により規制基準が設定されています。しかし、これらは全国一律というわけではなく、都道府県知事や市長が指定するため地域(自治体)によって異なります。

地域社会との良好な関係を維持するためにも、必ず工場が存在する地域ごとに必ず騒音規制基準を確認しましょう。

騒音障害防止のためのガイドライン

ここまで騒音の問題について、工場の周辺住民や地域の観点からお話ししました。ただ、騒音の問題は働く従業員にも大きな影響をもたらしかねません。そこで制定されたのが「騒音障害防止のためのガイドライン」です。

騒音障害防止のためのガイドラインとは厚生労働省が1992年に制定したもので、事業者が従業員を騒音障害から守るための対策を促進します。

これは工場内での騒音測定の実施や定期的な健康診断を行い、従業員の健康と安全を守ることに重点を置いています。事業者はこのガイドラインを活用して、騒音が懸念される工場内の環境改善に積極的に取り組むことが期待されています。

騒音対策の重要性

工場における騒音対策は、単なる騒音抑制だけでなく、法律遵守や住環境の維持、労働環境の改善などさまざまな側面から極めて重要です。

適切な騒音管理を行わないと法律違反による罰則や、地域住民とのトラブル、従業員の健康被害など重大な問題が発生するリスクがあります。

したがって、騒音対策は工場運営における不可欠な課題であるといえるでしょう。ここからはより具体的に騒音対策の重要性について見ていきます。

騒音について定められた法律を守るため

工場で発生する騒音は、環境基本法や騒音規制法などにより、法律で厳しく規制されています。これにより国民の生活環境の保護と健康の維持が目的とされています。

具体的には騒音レベルの上限値が定められており、それを超過した場合、改善命令が下され、従わないと罰則が科されることもあります。地域によって騒音に関する基準は異なるため、各地域の規制に従うことが必要です。この法律遵守が工場騒音対策のまず基本的な目的と言えるでしょう。

近隣からのクレームやトラブルを防ぐため

法律の基準を満たしていたとしても、工場から発生する騒音により、近隣住民からのクレームがなくなるわけではありません。

全国で受理される騒音苦情の中で工場に対するものが3割を占めている事実は無視できません。潜在的に不満を抱く住民も考慮し、事業を円滑に運営するためには、あらかじめ予防的な騒音対策を講じることが重要です。

労働環境を改善し作業効率を高めるため

工場内での騒音対策は、従業員の労働環境改善と作業効率の向上にも直結します。

騒音が激しい環境では、従業員はストレスを感じやすく、コミュニケーションの円滑さを失う可能性があります。その結果、作業効率が低下するケースも見受けられます。

騒音を最小限に抑えることで、快適な労働空間を作ることができるでしょう。

騒音による従業員の健康被害を防ぐため

工場内の継続的な騒音は、従業員の健康に深刻な影響を及ぼすことがあります。長期間にわたり大きな音にさらされ続けると、聴覚障害を発症するリスクが高まり、これは労働災害として認定される可能性もあります。

「騒音障害防止のガイドライン」をもとに従業員の健康を守り、健全な労働環境を維持するためにも、騒音対策を欠かすことはできません。

工場における5つの騒音対策とそのメリット

工場での騒音対策は以下の5つの基本対策を組み合わせることで、騒音を効果的に軽減できると期待できます。

・遮音する…壁や床に遮音シートを取り付けることで、音が内外部に漏れることを防ぎます。発生源を直接囲むことで工場内部の静粛性も向上し、工場内部での作業環境も快適になるメリットがあります。

・吸音する…吸音材を活用することで、工場内の反響音を減少させます。室内での響きを抑制するため作業環境がよくなり集中しやすくなるのがメリットです。

・防振する…防振シートを機械の下に取り付けるなどして地面や設備から発生する振動を吸収・抑制する手法です。機械の安定性が増し、長期的な騒音削減に貢献します。

・発生源を断つ…音の発生源を断つことは、最も根本的な騒音対策です。工場全体の静音化・エネルギー消費の削減・環境負荷を軽減することが期待されます。

・稼働・作業の時間帯を変更する…騒音が発生する作業を昼間の時間帯に集中させることにより、周辺住民への影響を最小限に抑えられるでしょう。

より具体的な騒音対策については下記記事もご覧ください。

関連記事:効果的な工場の騒音対策とは?対策方法は発生源と騒音の種類に合わせて選ぶ!

ファクトリアの「騒音」「音」に関する工場施工事例

最後に、過去にファクトリアで工場建設をお任せいただいた「騒音」「音」に関する工場の施工事例2つをご紹介いたします。

「音」「粉」「熱」に対して部屋分けをした製造エリア

過去、粉塵や騒音を伴うような「部屋を分けるべき作業」を一つの空間で行うケースがあり、従業員の働きやすさや安全性などの面でも課題を感じられていたお客様。

製造エリアを、生産工程上発生する「音」「粉」「熱」に対して、それぞれ部屋を分けて対策を講じました。

事例詳細:大洋電熱株式会社様の施工事例お客様のお声はこちら

「遮音性」に優れた外壁材や屋根材を採用した事例

断熱性・遮音性に優れた外壁材や屋根材を採用し、さらに上部にシーリングファンを設けることで、快適な作業空間を実現した事例です。

事例詳細:株式会社ワイ・テイ・エス様の施工事例

その他の事例:工場建設・工場建築のファクトリアの施工実績一覧

「うるさい」を抑えて安心安全で快適な工場運営を目指しましょう!

騒音は工場運営において切っても切り離せない問題ですが、効果的な対策を講じることで周辺住民との騒音トラブルや従業員の作業効率低下・健康問題などさまざまなリスクを抑えることができます。

まずは本記事内で紹介した「環境基準」や「騒音規制法」、具体的な騒音基準値を理解し、必要な対策を検討しましょう。

私ども「ファクトリア」はこれまで多くの工場建築の実績がありますが、何より企業の工場の現状や企画段階でのご要望に応じて最適な騒音防止策を提案することで、騒音問題の根本的な解決へと導くお手伝いをいたします。

騒音に関するお悩みがある、うるさい工場を改善したい、快適な作業環境にしたいとお考えの企業様、騒音の心配がない工場建設をお考えの場合は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

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